月下の誓約
捕らえられた敵の間者が、どんな末路をたどるのかを和成は知らない。
案外この場で命を落とした彼の仲間たちの方が幸せな気もした。
峰打ちに気付かず、未だに気を失っている男の手足を縛り、懐から無線電話を探り出して驚愕する。
「うっわ、古っ! これじゃ大した情報は得られない。ひとり生かしといてよかった」
男の持っていた電話は、杉森国では随分前に販売が終了しているくらい古い機種だった。
得られる情報もせいぜい通話履歴くらいのものだ。
和成は電話を自分の懐に収めて、街道の方へ様子を見に行った。
そろそろ塔矢がやって来る頃ではないだろうか。
ところが、やって来たのは逃げたはずの佐矢子だった。
和成の姿を認めると歩を早めて小走りにこちらに向かってくる。
「和成様、ご無事ですか?」