月下の誓約
非難するような口調に畏縮して、佐矢子は俯いて目を伏せる。
「すみません。でも、かなり引き返したのに塔矢様はいないし、和成様も来ないし、不安でしょうがなかったんです」
佐矢子のしょげかえった様子に、和成はハッと我に返った。
つい、いつも紗也に注意する時の口調になっていたのだ。
もっとも紗也は、こんな風に素直に謝ったりはしないので、結局怒鳴りつけてしまうのだが。
和成は表情を緩めて、気まずそうに目を逸らす。
「こちらこそすみません。あなたをこんな危険な事に巻き込んでしまって。せっかくのお休みを台無しにしてしまいました」
ホッとしたように微笑みながら、佐矢子は顔を上げた。
「いいえ。午前中はとても楽しかったし、後を付けられてからの恋人ごっこも楽しかったです。それに私、ひとつわかったことがあります。和成様は心に想っている方がいますよね?」