月下の誓約
「どうした、天才軍師。らしくないな」
和成は横目で塔矢を見やりながら顔をしかめた。
「からかわないでください。本当は三流軍師だと思ってるくせに」
「思ってないさ。だからどうしてあんな策を提示したのか不思議に思っている」
塔矢から視線を外し再び俯いた和成は、肩を落として話し始めた。
「私もあの策は三流だと思っています。けれど紗也様をお守りすることを最優先に考えると、どこも守りが手薄な気がして、結果あんな布陣になりました」
「そんなことだろうと思った。だが三流だと分かっていながら、なぜ提示したんだ」
「皆が紗也様をお守りすることを重視して賛同するなら、それでもいいかと……。無責任ですよね。今でも重責で混乱しています。紗也様をお守りすることがこんなにも重い事だと、私は初めて気付いたんです。今さらながら」