月下の誓約
何が目的で追いつめようとしているのかわからず和成は憤る。
「あなたは平気なんですか? 私はあなたを愛してはいないんですよ」
「かまいません。私があなたを愛していますから」
昨日中庭で見たのと同じ冷たい表情で、佐矢子はキッパリと言い切った。
いくら自分の好きな相手とはいえ、心の伴わない口づけを受けても空しいだけではないだろうか。
佐矢子の真意がわからず和成の苛立ちは募る。
図星には違いないが、根拠のない噂で紗也に迷惑をかけるわけにもいかない。
苛立つ気持ちそのままに、和成は佐矢子の両肩を荒々しく掴んだ。
「わかりました」
不機嫌そうな和成の顔を見上げて、佐矢子は少し戸惑うような表情を見せる。
そして静かに目を閉じた。
和成が顔を近づける。
吐息に触れて佐矢子の身体に緊張が走った。