月下の誓約
ますます項垂れた和成の背中を、塔矢は強く叩いた。
「甘えんな、おやじなんだろう。うちのような小国は兵も兵糧も限られている。持久戦になったらひとたまりもない事は、おまえも分かっているはずだ。とりあえず紗也様の事は棚に上げて考えろ。戦に勝つ事が紗也様の身を守る事にもつながる」
「わかりました。そうします」
機械的に答える和成を、塔矢はまじまじと見つめる。
「本当に分かったのか?」
「はい」
真顔で返事をするものの、和成の表情から心の内は計りかねた。
今ひとつ納得できずに、塔矢は探るように見つめる。
塔矢が何を気に病んでいるのか分からず、和成はキョトンと首を傾げた。
結局は和成の言葉を信じることにして、塔矢は席を立った。
「今度三流の策を提示したら、軍師はクビだからな。一兵卒に戻ってもらうぞ」
人を斬る事が嫌いな和成には、それが一番のお灸になると塔矢は思っていた。
「肝に銘じます」
和成はクスリと笑って頷いた。