月下の誓約


 和成は一瞬絶句した後、少し赤面する。


「ほとんど全部じゃないですか。なんで早く声かけてくれないんですか」
「おまえが他に目を向ける気になったんなら邪魔しちゃ悪いと思って」


 それを聞いて、和成は目を伏せた。


「違います。彼女とはそういう間柄じゃありません」
「口づけしといてそれはないだろう」


 非難する塔矢に、和成は全身で否定する。


「してません! うしろからはそう見えたかもしれませんけど、取引だったんです。ちょっと耳貸して下さい」


 そう言って和成は、作業中の隊員たちに背を向け、小声で塔矢に事情を説明した。


「なるほどな。女の勘は恐ろしいな」

< 271 / 623 >

この作品をシェア

pagetop