月下の誓約
夜、城の中庭で和成は月を見上げて立っていた。
今日は城下で人を斬ったから。
戦場でしかした事のないこの儀式を、城内で行うのは二度目だった。
一度目は紗也への想いに気付いた時。
血の汚(けが)れを清めるように、決して叶う事のない想いも洗い流してくれればいいのにと願った。
想いは消えるどころか益々募るばかり。
紗也は和成を好きだと言った。
和成の想いとは全く意味が違うけれど。
いっそ嫌われていれば、こんなに想いが膨らむこともなかったのだろうか。
「こんなとこが中途半端なのかな?」
問いかけても三日月は、昨日と同じように黙って和成を嘲笑い、やがて雲間に姿を隠した。