月下の誓約
翌日昼前、和成は珍しく紗也直々に呼び出しを受け執務室を訪れた。
「失礼します。紗也様、お召しによりまかり越しました」
いつも怒鳴り込むことの多い執務室の戸を、丁寧な挨拶と共に開けるのは本当に久しぶりのような気がした。
部屋に入ると、正面の机で何やら不機嫌そうな表情の紗也が、机に片ひじついている。
無言で手招きされ側まで来た和成を、睨み上げてうなるように言う。
「和成、不潔――!」
意味が分からず、和成は問い返した。
「戦の時以外は毎日風呂に入ってますけど、変な臭いでもしますか?」
紗也は相変わらず睨み付けたままで問い詰める。