月下の誓約


「昨日、城下のはずれで電算部の女の子と人目を忍んでチュウしてたって本当?」


 思わず隣の机を見ると、塔矢は「俺じゃない」と片手を挙げて否定した。
 噂の出所はおそらく一緒にいた先輩たちの誰かだろう。

 和成は一息ついて紗也に視線を戻す。


「どこでお聞きになったのか存じませんが、その情報は正しくありません。そもそも、なんでチュウしたら不潔なんですか。愛する人とするなら不潔でもなんでもないでしょう?」

「和成、その人を愛してるの?」

「違います。だからしてません」

「本当に?」


 疑わしげな表情で和成を見つめて、紗也はさらに追及した。


「今までした事ないの?」
「今までっていつからの事ですか?」
「え? した事あるの?」

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