月下の誓約
紗也が椅子から立ち上がって身を乗り出す。
隣で塔矢が吹き出した。
「あ……」
墓穴を掘った事に気が付いて、和成は口を押さえる。
しかし、すでに紗也の好奇心に火が点いてしまっていた。
「ねぇ、いつ? 誰と誰と?」
「誰だっていいじゃないですか。そんな事聞かないで下さい」
助けを期待して横を見ると、塔矢はずっと笑いをかみ殺して俯いている。
仕方がないので勝手に話を切り上げる事にした。
「もしかして、御用はそれだけですか?」
「うん」
邪気のない目で見つめる紗也に大きくため息をつく。
「つまらない噂話でいちいち呼び出さないで下さいよ」