月下の誓約


「うん。和成が好き」


 一瞬、呼吸が止まったような気がして、和成は密かに息を飲む。
 しかし、すぐに自分に言い聞かせた。

 紗也の”好き”と自分の”好き”とは意味が違う。
 隣で塔矢も睨んでいる。

 気を取り直して聞いてみた。


「ちなみに他には?」


 紗也は少し考えるように天井を見上げる。
 そしてポツリと答えた。


「塔矢」


 塔矢が再びクスクスと笑い始める。

 和成はガックリ肩を落としてため息をついた。


「それは恋ではありませんよ」


 紗也が不服そうに反論する。


「なんで? どこが違うの?」

「教わるものじゃありません。違いがわかったらそれが恋ですよ。それでは他に御用がないのでしたら失礼します」


 そう言って和成は執務室を辞した。

< 278 / 623 >

この作品をシェア

pagetop