月下の誓約
「うん。和成が好き」
一瞬、呼吸が止まったような気がして、和成は密かに息を飲む。
しかし、すぐに自分に言い聞かせた。
紗也の”好き”と自分の”好き”とは意味が違う。
隣で塔矢も睨んでいる。
気を取り直して聞いてみた。
「ちなみに他には?」
紗也は少し考えるように天井を見上げる。
そしてポツリと答えた。
「塔矢」
塔矢が再びクスクスと笑い始める。
和成はガックリ肩を落としてため息をついた。
「それは恋ではありませんよ」
紗也が不服そうに反論する。
「なんで? どこが違うの?」
「教わるものじゃありません。違いがわかったらそれが恋ですよ。それでは他に御用がないのでしたら失礼します」
そう言って和成は執務室を辞した。