月下の誓約


 部屋を出て電算室に向かおうとしていると、後ろから塔矢が声をかけてきた。


「おまえも言うようになったな」


 おもしろそうに笑う塔矢に少し眉を寄せる。


「私も恋心はわかりますよ」

「そうだったな」

「女心はわかりませんけどね。今でも佐矢子殿が本当に意地悪をしたかっただけなのか半信半疑です」


 塔矢がいたずらっぽく笑った。


「まぁ、あわよくばおまえの口づけは狙ってただろうけどな」

「それが一番わかりません。私は彼女に愛していないとはっきり言ったんですよ。でも”かまわない”って言われたんです。本当にかまわなかったんでしょうか」

「かまわないかどうかは人によって違うだろうけどな」

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