月下の誓約


 佐矢子は少し意地悪な笑みを浮かべる。


「ふられたばかりの傷心の身には当分恋人なんて欲しくありません。私が新しい恋をしたくなった頃には噂も落ち着いてるんじゃないですか?」

「すみません。ご期待に添えなくて」


 和成が目を伏せると、横から慎平が問いかけてきた。


「聞いていいですか? 佐矢子殿はどんな意地悪をしたんですか?」
「え? それは……」


 和成は言い淀んで佐矢子に視線を送る。
 それを受けて、佐矢子はイタズラっぽい笑みを浮かべながら片目を閉じて答えた。


「あら、それは恋人同士の秘密よ」
「えーっ? なんか気になるーっ」


 ぼやく慎平を見ながら、佐矢子はクスクス笑う。

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