月下の誓約
そして、和成に向かってしみじみと語った。
「ずっと慎平くんと和成様が楽しそうに話しているのを見ていました。こんな風に普通にお話ができるようになるとは思ってもみなかったので、嬉しいです」
どうやら慎平の言う通り、佐矢子にも近寄りがたいと思われていたようだ。
和成は苦笑して問いかける。
「あの、慎平が言ってたんですけど、私ってそんなに”近寄るな光線”が出てますか? 佐矢子殿の目に私はどんな風に見えてたんでしょうか」
静かに微笑んで、佐矢子は胸の内を語った。
「何でもできて容姿もきれいな人ってそれだけで近寄りがたいものですよ。和成様はめったに笑わないし、個人的な人付き合いもしないみたいだし、私には機械でできたきれいな人形のように見えていました。頭の中には電算機が詰まってるんだろうって。慎平くんが案外普通の人だって言うから、思い切って手紙を書いてみたのに突っ返されて、やっぱり機械なんだって思ったもの」
「その節は本当に失礼しました」
和成は改めて頭を下げた。