月下の誓約
慎平は目を丸くしてしばらく絶句した後、気を取り直して再び問いかける。
「でも、軍をまとめたり戦を仕切ったりする人は必要ですよね」
「そう言う意味じゃ、俺か塔矢殿になるのかな。前線をまとめてるのは塔矢殿だし、戦を仕切ってるのは俺だし」
杉森国の戦は、技術力を駆使した情報処理が要となっている。
事前に戦略の打ち合わせをしたら、後は中央司令所を介して情報を全部隊で共有し、戦略に沿って各部隊は自分の判断で行動する。
司令所は斥候から随時送られてくる戦場の情報を元に、定期的に戦況情報を提供するだけだ。
先の戦のように不測の事態でも起きない限り、軍師や中央司令所が部隊長に直接指示を出したりすることはめったにない。
「指示を出すんじゃなくって伝える事はあるけど。”ちょっと出すぎてますよ”とか」
「じゃあ、中央司令所が落ちたら大変じゃないですか」