月下の誓約
9.和成の秘密
夕方、和成はいつものように電算機の操作を教えるために紗也のいる執務室を訪れた。
今日は珍しく塔矢が残業をしている。
和成にしてみれば、紗也と二人きりよりは塔矢がいてくれる方が気が楽なのでいつもいて欲しいくらいである。
約束の一時間が経過し、作業を切り上げて和成が部屋を出ようとすると、紗也が不服そうな顔をして和成を呼び止めた。
「和成。そんなに私のそばにいるのがイヤなの?」
和成は振り返る。
「朝も申しましたが、そのような事はございません」
紗也は席を立って和成の前まで歩み寄り、一枚の紙を突き付けた。
「証拠はあるのよ! 仕事が忙しいとか言ってたけど、週の内四日は執務室を出た後すぐに城下に行ってるじゃないの!」