月下の誓約
紗也が怒っている理由は自分が紗也を避けているからだと思っていたのだ。
いつの間にか怒っている理由がすり替わっている。
少し前からそろばんを弾く手を止めて、二人のやりとりを見ていた塔矢が思わず吹き出した。
紗也はふくれっ面のまま和成に詰め寄る。
「遊びに行くんなら私も連れて行ってよ!」
「いたしかねます」
気を取り直した和成は即答した。
けれど紗也の不満は収まらない。
「なんでよ?! 護衛の和成が一緒なんだからいいでしょ?!」
「私の一存では決めかねます。塔矢殿にお聞き下さい」
和成がそう言うと、紗也は眉を寄せて和成を睨んだ後、塔矢の方を向いて甘えた声を出した。