月下の誓約


「今から出かけると日が暮れてしまいます。夜の街は危険が多いので明日までお待ち下さい」

「じゃあ、今日は和成ひとりで行くの?」

「私はこれから残業です。佐矢子殿に頼まれた仕事を今日中に仕上げないといけないので」

「佐矢子殿って噂の女の人?」

「そうです」


 紗也はからかうような笑顔を浮かべて和成に尋ねる。


「和成、噂は否定したけど本当はその人が好きなんじゃないの?」
「好きですよ」


 あまりにあっさり肯定され、紗也は面食らって少し目を見開いた。

 和成は笑って続ける。


「恋愛感情はありませんけどね」

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