月下の誓約
からかったつもりが、逆にからかわれたような気がして、紗也はムッとした。
眉根を寄せて口をとがらせる。
「なんか、おもしろくなーい。和成が私の知らない人と仲良くしてるなんて」
「右近や慎平にはそんな事おっしゃらないじゃないですか」
「だって右近や慎平は男だもん」
「なぜ女性だとおもしろくないんですか?」
「なんとなく。取られちゃいそうだから」
あまりにも子供じみた理由に、和成は肩を落とす。
「私はあなたの私物じゃありませんよ。忙しいのでこれで失礼します」
「もう! 逃げる気?!」
尚もわめく紗也を尻目に、和成はそのまま執務室の戸を閉めて立ち去った。
目の前で閉められた戸を睨んで紗也は腰に手をあて、鼻を鳴らす。
そして塔矢に向き直った。