月下の誓約
「塔矢。やっぱり和成おかしいわよ」
塔矢はそろばんで首筋を叩きながら紗也を見た。
「女の勘ですか?」
「そうじゃなくて。今日このまま和成と別れちゃったら一度も怒鳴られてない事になるのよ?」
「いい事じゃないですか」
目を細める塔矢に、紗也は両手を広げて力説する。
「おかしいじゃない。和成が城に来て以来そんな日はなかったのよ」
「あいつも大人になったって事でしょう」
紗也は黙って腕を組むと、探るように塔矢を見据えた。
「塔矢。何か隠してるんじゃないの?」
「何を隠してると思われますか?」