月下の誓約
静かに問い返す塔矢に、紗也は腰を屈めて顔を覗き込みながら言う。
「和成の秘密」
塔矢は声を出して笑った。
「また、随分と範囲が広いですね。そりゃあ、紗也様よりつき合いの長い分色々と存じておりますが、本人の承諾なしにお教えするわけにはまいりません」
「そんな昔の事じゃないのよ! だっておかしいのはここ最近なんだもの。最近何かあったんでしょ?!」
「ですから、昔でも最近でも私の口から申し上げることはできません」
塔矢は毅然として紗也を見つめる。
それ以上塔矢を追及するのは無理だと悟り、紗也はため息をついた。
「……わかった。今日はもう部屋に帰る」
そう言って紗也は、机の上を片付け執務室を出る。