月下の誓約
お伽噺の人形は、事あるごとに星を見上げて願い事をしていた。
”どうか、人間にして下さい”
願うだけでは叶わない。
心を手に入れるまでは。
お伽噺はそうだった。
意味の分かっていない和成にも、心を手に入れる事はできないのだろう。
気が付くと湯呑みの中の酒がなくなっていた。
もう少しつぎ足して来ようか少し考える。
城内での飲酒は禁止されてはいないが、和成は紗也の護衛という職務の性質上、城内に限らず深酒はしないように言われている。
休みの日に城下へ右近たちと飲みに行っても、三杯以上飲んだことがない。
元々酒に強いので、城内勤務になってからは酔うほど飲んだ事がないのだ。
色々なことを考えるのがもう面倒になって、今宵は気持ちよく酔ってみたい気分になっていた。
立ち上がって部屋に戻り、湯呑みに酒を注ぐ。
瓶を持ち上げると中身が後わずかしかない事がわかった。
これなら全部飲み干してしまっても問題ないだろうと思い、瓶も抱えて元の位置へ戻る。