月下の誓約
しばらくの間、月見酒と洒落込んでいると懐の電話が鳴った。
『おまえ、春に結婚するんだって――――っ?!』
これ以上ないというくらい大声でわめく右近に、思わず電話を耳から遠ざける。
「しねーよ。どんだけ尾ヒレ付いてんだよ。その噂」
和成は呆れたようにため息をついて、事の真相を右近に話した。
『まぁ、変だとは思ったんだけど、口づけしてるのを見た奴がいるっていうから、紗也様吹っ切るためにヤケにでもなってんのかと思ってさ』
「ヤケで結婚したら相手に失礼だろ」
和成がそう言うと、右近がおもしろそうに問い返してきた。
『お? 相手の気持ちがわかるようになったのか? もしかして中途半端の意味わかった?』