月下の誓約
和成が飛び上がりそうなほど驚いて振り向くと、そこに紗也が立っていた。
「悪い、右近。紗也様がお見えになった。またな!」
一方的に電話を切って立ち上がろうとすると、紗也の方が先に隣に座って和成の顔を覗き込んだ。
「右近と何話してたの? 私の悪口?」
探るように見つめる紗也に、和成は笑顔を引きつらせながら言い訳をする。
「悪口など滅相もございません。明日、城下をご案内する話をしていただけです」
「本当?」
紗也は首を傾けて目を細くしながら、さらに和成を見据える。
蛇に睨まれた蛙のように和成が黙って見つめ返していると、突然紗也が顔を近づけてきた。