月下の誓約


「あれ?」


 そうつぶやきながら、和成の口元に向かって益々顔を近づけてくる。

 心臓に悪い。
 一気に脈拍数が跳ね上がり、至近距離に迫った紗也の唇に、和成の目は釘付けになった。

 予測していなかった紗也の行動に焦りながら、紗也が近付いた分だけ顔を退いて問いかける。


「な、何ですか?」
「和成、お酒飲んでるの?」


 どうやら酒の匂いを嗅いでいたらしい。
 理由がわかってホッとしながら、和成は答えた。


「はい。飲んでます」
「えーっ?! 和成お酒飲めるのーっ?!」


 紗也が大げさにのけぞる。

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