月下の誓約
両手で湯呑みを握り、茶をすすりながら紗也が他人事のように言う。
和成は紗也の横に座り直すと、酒を飲みながら呆れたように横目で見た。
「あなたが平和になさるんですよ。君主なんですから」
「あ、そうだった。忘れてた」
「肝心なこと忘れないで下さい」
晩秋の夜風がふたりの間を、そよと吹き抜ける。
紗也がひとつ、くしゃみをした。
「お風邪を召しますよ」
和成は自分の着ていた上着を脱いで紗也の肩にかける。
「わぁ、あったかーい」
紗也は歓声をあげながら、身体を丸めてその中に潜り込んだ。