月下の誓約
「和成にだっこしてもらったらこんな感じなんだね」
嬉しそうに向けられた無邪気な笑顔から、和成は目を逸らして酒を飲む。
「妙なことをおっしゃらないで下さい。それより、こんな時間にわざわざいらしたのは何か御用だったのではないですか?」
紗也は昆布茶を飲み干して湯呑みを和成に渡した。
「こんな時間って、まだ九時じゃない。塔矢が真夜中に行っちゃダメって言うから早めに来たの」
「ですから、どういうご用件で?」
少し俯いて、紗也は眠そうに何度もゆっくりと瞬きをする。
「うん……本当は……聞きたい事があったんだけど、なんかもう、どうでもよくなってきちゃった」
そう言って紗也は上着に潜り込んだまま、和成の肩にもたれかかった。