月下の誓約
笑った拍子に身体が揺れたので、紗也が目を覚ましたのではないかと身体を起こして覗き込む。
呆れたことにかなり揺さぶられたにもかかわらず、目を覚ます気配もない。
その幸せそうな寝顔を見つめながら和成は懇願した。
「どうか嫌いだとおっしゃって下さい。和成なんか顔も見たくないと。そんな風に無防備に慕われているとツライです」
紗也の頭をひと撫でして、長い黒髪の先端を手に取りそっと口づける。
そして沈みかけた月を見上げた。
幸せな重みをひざの上に感じながら、紗也のせいなのか酒のせいなのか火照った顔を夜風で冷ます。
しばらくして酒も底をつき酔いも醒めてくると、上着を紗也に取られて肌寒さを感じてきた。
このまま、こんな所で眠りこけていると紗也が本当に風邪を引きかねないので肩をゆする。
「紗也様。お部屋でお休み下さい」