月下の誓約
11.コ・ワ・シ・テ・シ・マ・エ
翌日昼過ぎに、和成は刀を携えて執務室を訪れた。
戸を開けた途端、紗也が満面の笑顔で駆け寄ってくる。
飛び付こうとした紗也を目と鼻の先でよけると、空振りに終わった紗也が不服そうに振り返った。
「ちょっとぉ。なんでよけるのよ。私は返り血じゃないのよ」
「そういう事はなさらないで下さいと申し上げたじゃないですか。お迎えにあがりました。お支度はお済みですか?」
紗也はすぐに笑顔に戻ると、嬉しそうに財布を掲げて見せる。
早くも不機嫌はどこかへ飛んでいったらしい。
「うん。おこずかい貰っちゃった。お金使うの久しぶり」
このお気楽な切り替えの早さは、飽きっぽい性格に由来しているのかもしれない。
和成は苦笑して、塔矢に尋ねた。
「塔矢殿からですか?」
「気にするな。貯蓄されてる紗也様の給料だ」
「あぁ、一応働いてますもんねぇ」