月下の誓約
不服そうな顔で少し考えた後、紗也はふいにイタズラっぽい笑顔を向けた。
「じゃあ、和成お兄ちゃんで、私妹ね」
「え?」
「今から妹に対して”様”と敬語は禁止ね」
「無茶をおっしゃらないで下さい。いきなり言葉は変えられませんよ」
別の意味で動揺する和成を指差して、紗也が指摘する。
「もう、いきなり敬語だし」
「妙な設定なんか別にいいじゃないですか」
「ダメ。和成のタメ口聞きたいもん」
二人は言い争いながら城を出て正門へと向かった。
正門にたどり着くと門番が和成に挨拶をする。
和成も挨拶を返して、門の横にある認証機に認証札をかざした。
続いて紗也も札をかざすのを見て門番が問いかけた。
「紗也様もお出かけですか?」
「うん。ちょっとお忍び」