月下の誓約
紗也はにっこり笑って和成を促す。
「行こう。”お兄ちゃん”」
それを聞いて門番は不思議そうに和成を見つめた。
「それでは、行ってまいります」
苦笑をこぼしながら和成は門番に会釈すると、紗也に続いて門をくぐった。
門を出た二人は城下町に向かって歩き始める。
城から少し歩いたところで七、八歳の男の子が紗也に駆け寄ってきた。
男の子は紗也を見上げて問いかける。
「お姉ちゃん、お城の人?」
「そうよ」
少し腰をかがめて男の子を見つめながら紗也が答えると、男の子は四つに折り畳まれた紙を両手で紗也に差し出した。
「これ。殿様に渡して」