月下の誓約
受け取った紙を、紗也は不思議そうに眺める。
その隙に男の子は、走って城下町の方へ消えていった。
紗也は和成を振り返り、首を傾げて尋ねる。
「殿様って、私の事?」
「拝見します」
和成は厳しい表情で、紗也の持った紙を半ば奪うようにして受け取ると、広げて内容を確認した。
それは、新聞や雑誌の活字を切り抜き、貼り合わせて作られた脅迫状だった。
”こどもの命がおしければ 西の関所のぞうきばやしにひとりでコい”
横から覗き込んだ紗也が大声を上げる。
「子供ってさっきの子――――?!」
「違うと思います。この手紙には不審な点が多すぎます。塔矢殿に相談しましょう」
そう言って和成は踵を返した。