月下の誓約


 紗也も後に続いて、さっき出てきたばかりの門をくぐる。


「あれ? お早いお帰りで」


 せわしげに認証札をかざし、物も言わずに早足で城内に向かう二人を、門番が不思議そうに見送った。

 執務室へ戻ると部屋の鍵は掛かったままだった。
 和成は鍵を開けて紗也と共に部屋へ入る。


「少しお待ち下さい。塔矢殿を呼び出しますので」


 そう言って和成は懐から電話を取り出し、専用回線で塔矢を呼び出した。

 和成の言葉に返事もせず、紗也は眉間にしわを寄せ、落ち着かない様子で自分の髪先を弄んでいる。

 少ししておもむろに、

「私、西の関所に行ってくる」

 と言うと、部屋をかけ出して行こうとした。

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