月下の誓約


「なりません!」


 和成はあわてて電話を取り落とすと、とっさに紗也の腕を掴む。

 腕を引かれ、その反動で紗也が背中から和成に倒れ込んできた。
 和成はそれを両手で受け止める。


「もう! 離して!」


 無理矢理引き戻されてムッとした紗也が、和成の手を振りほどいて逃れようとした。
 和成は逃すまいと、両腕でつかまえる。

 紗也をひとりで城外に出す事自体もっての外なのに、その上危険とわかっている場所に行かせるわけにはいかない。


「行ってはなりません!」
「なんで?! 子供が危ないんでしょ?! 助けなきゃ!」


 なおも抵抗を続ける紗也を、和成は両腕の中に押さえ込む。

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