月下の誓約
『和成?! 何があった?! 和成!』
首に下がった回線がつながったままの電話から、焦ったような塔矢の声が聞こえた。
両手が塞がっているので、和成は大声で叫ぶ。
「塔矢殿ーっ! すぐ執務室に来てください!」
電話が切れた。
塔矢がこちらに向かっているのだろう。
それまではなんとしても紗也を引き止めなければならない。
「離してよ!」
「あなたが行く必要はございません! たまには私の言う事もお聞き下さい」
紗也は和成の腕の中でさらに暴れる。
「お願いです!」
そう言って紗也を押さえ込んだ腕に力を込めた時、和成の頭の中で何かが弾けたような気がした。