月下の誓約
塔矢は眉間にしわを寄せて走り去る和成を少し見送った後、部屋の中に目を移す。
入口近くに紗也が呆然と立ち尽くしていた。
「紗也様、また和成とけんかでもなさったんですか?」
塔矢が問いかけると、紗也は糸が切れた操り人形のごとく、崩れるように床にひざをついて座り込んだ。
「紗也様! いかがなさいました?!」
塔矢はあわてて駆け寄る。
「和成と何かあったんですか?」
問いかける塔矢に、紗也は激しく首を振る。
「なんでもないの。和成は関係ないから」
あきらかに二人とも様子がおかしいのに関係ないはずがない。
塔矢は人を呼んで紗也を任せると、和成の部屋へ向かった。