月下の誓約
12.軍師の上策、君主の決断
自室に駆け込んだ和成は、椅子に座り机の上にひじをついて頭をかかえる。
一番知られてはならない相手に知られてしまった。
何も言わなかったが、おそらく紗也は和成の想いに気付いてしまっただろう。
そして、思い出すだけで身震いがする、あの心の奥底からわき上がってきた真っ黒な感情。
――――コ・ワ・シ・テ・シ・マ・エ――――
何を?
紗也との関係を?
それとも紗也自身を?
どうせ手に入らないならいっその事――――。
そんな風に心の奥底では思っていたのだろうか。
あのまま、紗也が何も言わなかったら、そして塔矢がやって来なければ、自分が何をしようとしていたのか和成にはわからない。
わからないからよけいに怖かった。
和成は目を伏せ、額に手を当て懊悩(おうのう)する。