月下の誓約


 そこへ塔矢が断りもなく怒鳴り込んできた。


「和成! 紗也様に何をした?!」


 そのまま動かず、和成は抑揚のない声で答える。


「抱きしめてしまいました」
「それから?!」


 塔矢が畳みかけるように詰問した。

 意味が分からず、和成はチラリと塔矢に視線を向ける。


「……それだけですが……」


 仁王立ちしていた塔矢が、腰をかがめて顔を近づけると小声で問いかけた。


「腰を抜かすほど動揺なさってたんだぞ。接吻くらいしたんじゃないのか?」

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