月下の誓約
「女官たちがみんな、和成は優しいって言うのよ。でも私はいつも怒られてばかりだから優しい和成って見た事ないのよね」
毎日目にする塔矢の渋い顔が脳裏に浮かび、和成は小さくため息をついた。
「申し訳ありません。それについては毎日塔矢殿から注意を受けているのですが、私が大人げないばかりについ……」
紗也がおもしろそうに目を輝かせた。
「毎日言われてるの? 塔矢もマメねぇ」
「今後はなるべく優しく接するように努力いたしますので……」
「いい」
和成が今後の決意を述べようとすると、紗也はそれを途中で遮った。
そしてふてくされたように、プイと横を向く。
口をとがらせ横目で和成を見上げながら言う。
「努力して優しくしてくれなくていい。今まで通りでいいから。なんか調子狂うし。私、家臣のくせにとか思ってないから」