月下の誓約


 塔矢は大きく安堵のため息をもらした。


「だったら、まだごまかしはきく。紗也様が落ち着いたら改めて謝罪しろ。それまでは謹慎してろ。他の部署には適当に言っといてやる」


 和成の肩を軽く叩いて、塔矢は立ち上がった。
 そして、戸口へ向かおうとする。

 背を向けた塔矢の後ろで、和成が俯いたままつぶやいた。


「無理です」


 塔矢が振り返ると、和成は虚ろな目で俯いたまま、力なく笑う。


「腰を抜かすほど動揺なさってたって事は、お気付きになったって事でしょう?」
「それでも、ごまかし通せ。確証はないんだ」


 和成は突然顔を上げると、塔矢に向かって叫ぶように訴えた。


「私の方が無理なんです! もう、ごまかしきれません!」

< 341 / 623 >

この作品をシェア

pagetop