月下の誓約
塔矢は大きく安堵のため息をもらした。
「だったら、まだごまかしはきく。紗也様が落ち着いたら改めて謝罪しろ。それまでは謹慎してろ。他の部署には適当に言っといてやる」
和成の肩を軽く叩いて、塔矢は立ち上がった。
そして、戸口へ向かおうとする。
背を向けた塔矢の後ろで、和成が俯いたままつぶやいた。
「無理です」
塔矢が振り返ると、和成は虚ろな目で俯いたまま、力なく笑う。
「腰を抜かすほど動揺なさってたって事は、お気付きになったって事でしょう?」
「それでも、ごまかし通せ。確証はないんだ」
和成は突然顔を上げると、塔矢に向かって叫ぶように訴えた。
「私の方が無理なんです! もう、ごまかしきれません!」