月下の誓約


 和成が目覚めると夜になっていた。

 先程より少し、落ち着いて考えられるようになったので、塔矢の言うように上策を練ってみることにする。

 まずは状況を見極める。

 和成の想いを知っているのは塔矢、紗也、そして本人。
 右近は今回の事件には無関係だし、和成の進退がどう転んでも何の影響も受けないし及ぼさないので除外していいだろう。

 もしも、和成の護衛解任という事になったとしたら、人事が動く。
 人手不足の杉森国で人の補充は大事業なのだ。
 しかも紗也の護衛ともなるといい加減な人事は行えない。
 和成の解任自体、誰もが認める公明正大な理由が必要となる。
 紗也の不名誉となるような本当の理由を告げるわけにもいかない。

 解任の理由を考えてみても、紗也が解任を望むか、和成が国務全般から退かない限り無理な気がした。
 それにしたって理由が必要だろう。
 なにしろ和成は国務に関わりすぎている。
 一身上の都合では納得してもらえそうにない。

 三人の内だけで事を収めるなら、塔矢の言うようにごまかしてしまうのが一番の上策には違いない。

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