月下の誓約
朝の九時過ぎ、塔矢が執務室に顔を出すと、すでに紗也が机に向かって珍しく仕事をしていた。
塔矢が挨拶をすると、紗也も普段通りの挨拶を返す。
紗也が立ち直っていることに安堵して塔矢は自分の席についた。
少しして紗也が塔矢に問いかけてきた。
「塔矢。和成は? ちゃんと仕事に出てる?」
塔矢は厳しい表情で紗也に答える。
「あいつは自室で頭を冷やしております」
紗也が椅子から立ち上がった。
「なんで?! 和成は関係ないって言ったじゃない!」
「あなたに不敬を働いたんだから当然です」
塔矢が憮然としてそう言うと、紗也は目を見開き一瞬にして赤面した。
「なんで知ってるの?」
その反応が塔矢には少しおもしろくないので、自然と眉間にしわが寄る。