月下の誓約


 執務室を出るとすぐに、塔矢は和成の部屋へ向かった。

 外から声をかけたが返事がないので戸を開ける。
 そこには昨日別れた時と同じ椅子に座り、別れた時よりも更に項垂れて、憔悴しきった和成が、どんよりと重苦しい空気の中にぼんやりと座っていた。

 塔矢は額に手を当て、目を閉じると思い切りため息をつく。


「おまえ、また昨日からそのままだろう」


 和成は項垂れたまま、消え入りそうな声でつぶやいた。


「ずっと考えましたけど、塔矢殿を上回る上策を思いつきません。私は軍師も解任していただかなければならないようです」

「バカなこと言ってないで、すぐに顔を洗って身支度を整えろ。紗也様がお召しだ」


 塔矢は和成の頭にひとつげんこつを落とす。
 そして腕を取って立ち上がらせた。

 なすがままに立ち上がった和成は、塔矢から顔を背ける。

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