月下の誓約


 執務室へ向かう道すがら塔矢は和成の上策を聞いた。

 塔矢の策では表面上は丸く収まっても、和成も紗也も心底納得はできない。
 むしろわだかまりが残ってしまう。

 それに対して、和成の策では二人とも納得の上で結論が出せる。

 だが、それは塔矢にとってはあまりおもしろいものではなかった。

 執務室にたどり着いた塔矢は眉間にしわを寄せたまま、部屋の外に留まって入室する和成を横目で見送った。

 挨拶と共に頭を下げて、和成は部屋に入る。
 正面の執務机には紗也が座り、黙って和成を見つめていた。

 和成は紗也の前まで歩み寄ると、まずは昨日の非礼を謝罪する。

 顔を上げると紗也が首を振った。


「昨日のことはもういいの。塔矢から何も言うなって言われてるんでしょ? 聞かなかったことにするから、全部話して」

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