月下の誓約
今宵は半月。上弦の月。
先程、風呂上がりに眺めた空はよく晴れていた。
今頃は月が中庭から見える位置にきているだろう。
和成は上着を羽織って、自室の戸を開けた。
廊下に一歩踏み出した途端、ギクリとして足を止める。
月見の指定席、中庭へと降りる石段に和成の上着を羽織った紗也が座っていたのだ。
「どうかなさったんですか?」
和成が声をかけると、紗也は背を向けたまま独り言のように答える。
「月がきれいだったから、和成が出てくるかなぁと思って待ってたの」
「私が出てこなかったらどうなさるおつもりでしたか? 御用でしたら電話して下さればこちらから出向きましたのに」
「別に用があったわけじゃないし、和成と月見酒でもと思って」
「お酒を召し上がってるんですか?!」
和成はあわてて紗也の横にひざをつき、手元を覗き込む。