月下の誓約


「これ。昨日のお小遣いで買ったの。食堂の売店にあったから」


 紗也が笑って差し出したのは缶に入った甘酒だった。

 一気に気が抜けて、和成は安堵のため息をもらす。


「おどかさないでくださいよ」


 紗也は和成の心配など気にもとめず、もう一本の缶を差し出した。


「はい。和成にもあげる」
「ありがとうございます」


 礼を言って受け取ると、和成は紗也の隣に座り直す。

 缶のふたを開けて甘酒を一口飲み、気になっていたことを尋ねてみた。


「前から思ってたんですけど、こうやって夜に部屋の外を出歩かれるのを部屋付きの女官たちは何も言わないんですか?」

「眠ってるから知らないの」

「は?」


 主より先に女官が寝てしまうなど、職務怠慢ではないだろうか。
 それとも紗也が寝たふりでもして、女官を下がらせた後こっそり出歩いているのだろうか。
 和成は訝しげに片眉を上げる。

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