月下の誓約
「薬で眠らせてるの」
平然と言い放つ紗也に、和成はため息をもらした。
「分量間違えると危険ですので、今後はおやめ下さい」
「大丈夫。自分で試してみたから」
「なお悪いです」
以前、侍医に処方された薬を、飲まずに隠し持っていたらしい。
紗也が苦い粉薬を嫌っている事を和成は知っている。
何度か愚痴を聞かされた事があるからだ。
しばらく二人とも黙ったまま、月を眺めて甘酒を飲む。
甘酒を飲み干した紗也が口を開いた。
「あの手紙、子供のイタズラだったんだってね」
「そうらしいですね」
紗也は空になった缶を横に置き、身体を縮めて和成の上着の中に収まる。