月下の誓約
「あの時ね、すごくびっくりしたの」
「申し訳ありません。驚かせてしまって」
和成が謝ると、紗也は首を振った。
「違うの。和成に驚くよりも自分にびっくりしたの」
何の事かわからず、和成は紗也の横顔を見つめる。
「和成にぎゅってだっこしてもらったら、きっとこの上着みたいにあったかくて安心して眠くなっちゃうくらい、ふわふわ気持ちいいんだろうなって勝手に思ってたんだけど、実際は全然違ってたからびっくりしたの。自分の感じた感覚の違いに」
詳しく聞いても何の事かさっぱりわからなかった。
紗也は和成を見つめて、淡く微笑む。
「でもね。和成の方が上着よりもずっとあったかかったよ。寒いときにまた、ぎゅってしてもらおうかな」