月下の誓約
和成はそっぽを向いたまま、腕を組んで憮然と答える。
「それとこれとは別です。私は仕事に私情を挟むつもりはございません」
「だめよ。挟んでくれないと」
「は?」
真顔で言う紗也を、和成は訝しげに見つめる。
「でないと、最強の護衛にならないじゃない」
「あぁ」
思わず顔がほころんだ。
「全力でお守りいたします。ただし、わがままを聞くのは業務外ですから」
「もう! どうやったらわがまま聞いてくれるの?」
「それは……」
和成は一瞬言い淀んだが、すぐにきっぱりと言い切る。
「一生、致しかねますね」