月下の誓約
紗也は不思議そうに和成を見た。
和成は目を合わさないように横を向く。
和成があさってを向いたので、今度は塔矢を見つめたままゆっくりと椅子に座った。
それを見届けて塔矢は切り出す。
「紗也様。毎晩のように和成の部屋を訪ねていらっしゃるそうですね」
紗也は横にいる和成を睨む。
けれど和成は相変わらずあさってを向いている。
紗也は塔矢に向き直って言い訳をした。
「真夜中には行ってないもん」
塔矢は厳しい表情で紗也を見据える。
「真夜中でも昼間でも同じ事です。女性がひとりで男性の部屋を訪れてはなりませんと女官長に教わってるでしょう」
「部屋の中には入ってないもん」
「夜には城の安全管理機能が作動して、和成の部屋の付近は人通りが途絶えるのをご存じでしょう。部屋の中でも前でも密室に変わりありません。その証拠にこいつは夜になったら部屋の前の廊下を部屋の一部と勘違いして、廊下で酒を飲んだりしてるじゃないですか」